医療×ICTを学んで次世代のセラピストになろう!
ICTって何だろう?
ICT(情報通信技術)は,スマホやPCなどの情報機器を用いてコミュニケーションを取る技術です.LINEやinstagramなど,皆さんが日常で使っているものにもICTが用いられています.ICTの最大の強みは「情報を遠くに飛ばす事」です.SNSで流れてくる美味しそうなご飯や綺麗な写真なども,全て「情報」の1つです.このように,情報によって人と人とのやり取りを可能とする技術がICTです.
ICTは情報を遠くに飛ばしてコミュニケーションをとる技術!
医療ではどのようにICTが役に立っている?
医療においてもICTは非常に役に立っています.具体的には,まだ一般化されてはいませんが,直接病院に通えない患者さんが遠隔で診療を受けることができるようになったり,1人暮らしのお年寄りを遠方の家族が見守ることができる…などが挙げられます.その日の体調を遠くにいる医者や家族が把握できる技術は非常に重要であり,超少子高齢化が進む現代の日本では必要なシステムとなります.自分の住み慣れた環境で医療のサービスを受ける事ができ,自分の事は自分で行ってその人らしく自由に生活する…という環境を設定することが可能になります.
セラピストがICTを学ぶということ
〇なぜセラピストがICTを学ぶ?
セラピストがICTを学ぶ理由を大きく分けて2つあります.1つ目は,時代背景です.超少子高齢化が進むにしたがって,慢性的な病床数不足や人手不足に陥ってしまいます.そのような時代では,在宅でのお年寄り見守りシステムや,地域全体で患者さんの体調を管理するシステムなどの需要が高まります.これらを実現するのがICTであり,利用者の方のサポートをするセラピストも適切に使いこなせることが重要となります.
まだセラピストにとってICTはまだ難しい知識と技術ですが、セラピストの卵がセンサや簡単なプログラミンを学ぶことで,医療福祉で役に立つ便利な装置を開発できるような発想豊かなセラピストを育成します。
〇はじめての人も「安価」で「簡単に」
本学院では工学を専門とした教員が,医療者の目線に立った技術に関する講義を行っています.キーワードは「はじめての人も」「安価で」「簡便に」です.例えば,本学院ではmicro:bit:マイクロビット(3000円程度)と呼ばれるマイコンボードを使った講義をしています.micro:bitはプログラミングを行うための教材であり,イギリスなどで初歩のプログラミング教材として義務教育課程で無償配布されているアイテムです。直感的にとても簡単にプログラムができます.また,動きを検知するセンサ数種類を搭載しており,人の動きなどを測定することができます.安価かつ簡便な物で,最大限現場の役に立つ仕組みを学生と一緒に考えていきます.
自由な発想で,誰でも簡単に技術に触れてみよう!
次世代のセラピスト育成に向けた本学院のICT教育
ICT教育のカリキュラム
本学院では,1年次の「医療情報科学演習Ⅱ」と2年次の「リハビリテーション工学演習」でICT教育を行っています.小学生でも簡単に扱えるマイコンボードであるmicro:bitを利用し,簡単なプログラミング教育を行っています.2年間のICT教育を通して,問題解決に向けた推論,情報収集や遂行方法の手段を身に着ける事を目的としています.これらの講義では,公立はこだて未来大学や函館高専の学生がTA(teaching assistant)として加わり,講義のサポートをしてくれています!
1年次:医療情報科学演習Ⅱ
医療情報科学演習Ⅱでは,micro:bitを利用して簡単なプログラミングを行います.micro:bitには,人の動きを検知する加速度センサや,角度を測る角度センサなど,様々なセンサが搭載されています.これらのセンサを用いて,便利なもの・面白いものを作ってみるのがこの講義の目的です.プログラムはブロックをはめ込むようにして行われるので,誰でも簡単に行うことができます.学生からは,関節可動域を自動で測定するプログラムなどの臨床でもすぐに応用できそうなアイデアが出てきました.他にも,頭の動きを検知する事で授業中の居眠りを防ぐプログラム(!!)や,距離センサを用いたソーシャルディスタンスを確保するためのプログラムなど,自由な発想で様々なものづくりを行っています!
2年次:リハビリテーション工学演習
リハビリテーション工学演習では,医療情報科学演習Ⅱの内容を踏まえた応用的な内容を取り扱います.この講義では,身の回りの環境を対象とした問題提起,手法の調査,独自の手法の提案など,現実問題に即した課題を行っていきます.この講義では,以下の2つをトピックとして取り扱っています.いずれも,必要な知識の座学を行った後で,演習を行っています.
〇 センシング演習
micro:bitに搭載されている様々なセンサを用いて,人の動きがどのように測定できるかの演習を行います.これらのセンサはスマホにも搭載されているため,医療現場で使えそうな便利なアプリの調査や独自のアプリの提案も行っています.この他,機械学習と組み合わせ,臨床や在宅へ応用できる異常検知システムの提案なども行っています.
〇電子工作演習
電気回路を利用した工作について学びます.micro:bitはそれ単体でも便利なものですが,電気回路と組み合わせる事で,スイッチやLEDの操作など様々な仕掛けを考えることができます.身近にある段ボールやアルミホイルを用いて,認知症患者見守りのためのセンサマットなどを作成しています.